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WORDS

-それ以外に抽象しようのない-

配慮

配慮

配慮

 我々がしだいに他者への気配りのできる優しい人間になるにつれて,我々の注意の方向は「我々自身の欲求や気分,興味関心が何に向いているか」から「他者の欲求や気分,興味関心が何に向いているか」へと逸れていく。我々は他者に配慮ができるマメな人間になるにつれて,他者本位の人間になっていく。我々は我々の配慮する他者そのものの気分を真に体験することができないにもかかわらず,だ。

 

 我々の配慮がそれを享受する誰かにとって真の配慮であるのは,「その人の欲求や気分,興味関心やら意識の流れやらが切実に必要とするものを,その人自身では簡単に手に入らないので,その人が必要とするものをその人以外の誰かが与えざるを得ない」という状況に限られる。自分で手に入れられるものを他者から提供されるのは配慮ではないのだ。我々は独力で容易に手に入れられるものを,自分で手に入れてはならないのか?自分でグラスに注ぐことのできる水をわざわざ他者に注いでもらい,不必要にありがたがらねばならず,注いでもらうことを拒否することが不適切であるとされる集団は,一体何なのか?

 

 我々が他者の興味関心に対して配慮するのならば,我々は我々自身の興味関心に対して配慮してはならないのか?自分自身の興味関心を忘れ,他者の興味関心への配慮ばかり行おうとする集団の歩みは遅い。なぜなら体験し得ない他者の興味関心を満たそうとするよりも,体験し得る自分自身の興味関心を満たそうと構成員が時間と労力とをそそぐほうが,効率がいいからだ。

 というような集団が理想であると私は思う。