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WORDS

-それ以外に抽象しようのない-

合成語の単位化

言語

合成語の単位化

 

 (英語で「夫妻」ってなんていうんだろう。記憶にない)そう思ってGoogle先生に聞いてみたら"couple"と出てきた。先生を信用して,「夫妻」という概念の表現としては"couple"の使用頻度が最も高いということにしよう。

 ここで不思議に思ったのは("couple"という語の発音を日本語的に表現した「カップル」っていうのは,日本語の場合「未婚の恋人2人1組」のことを指すなあ)ということだった。つまり英語ではcoupleという1語で恋人どうしなら未婚・既婚どちらも含意する(どちらかというと既婚者のほうを指すらしいが)に対し,日本語では「カップル」という1語が示すのは主に未婚の恋人どうし2人1組(ただし既婚の恋人同士でも「カップル」と呼ぶこともたまにある)である。

  とりあえず1つ確認したいのは,同じ恋人どうし2人1組であっても,日本語の場合は「未婚」「既婚」両者を区別するけれど,英語の場合は両者を区別しないということ。ここには日本語*1話者)と英語*2話者)とのあいだの,恋愛観・結婚観の違いや,物事の抽象度の違いがあるのかもしれないけれど,その話は置いておく。

 ところで既婚の恋人同士2人1組の表現として,英語には"Mr.&Mrs.+〈氏〉"というものもある。"couple"が「夫妻」を一意に指示するとするのには抵抗があるけれど,"Mr.&Mrs.+〈氏〉"のほうだったら「夫妻」を一意に指すものするのに抵抗はない。

 ただ,どうも自分がしっくりこないのは,"Mr.&Mrs.+〈氏〉"という表現には「ニコイチ」感がないなということ。「夫妻」という単語は,2人の人間が1組で1単位であるという感じがするけれど,"Mr.&Mrs.+〈氏〉"という表現は,2人の人間が1組で1単位をなしているという感じがせず,Mr.とMrs.がそれぞれ1単位として互いに独立しているという感じがする

 ここまで考えて「夫妻」という単語を見返して気づいたのは(「夫妻」という単語だって,「夫」+「妻」の合成じゃないか。「夫」はMr.で,「妻」はMrs.だし,「夫妻」も"Mr.&Mrs.+〈氏〉"と同じなんじゃないの?)ということ。確かに「夫妻」という語は,単語の構成を見ると,元来は夫と妻という夫妻の構成単位を併せたものだったのだろう。けれど,仮に元来はそうであったのだとしても,現在の少なくとも自分の感覚,つまり「夫妻」という語がもたらすイメージは,2人1組の1単位,基本的にはそれ以上分割しないもの(分割できるけれど),である

 ここまで考えてさらに思ったのは,「元来は複数の要素から合成された単語であっても,使用されているうちに(原則的には)それ以上分割のされない1つの単位としてのイメージとなることがあるのかなあ」ということだ。今回の「夫妻」もそうだと思うし,多くの人にとって1つの地名・駅名である「渋谷」「茗荷谷」「白金台」なども,元来は谷や高台といった「地理的情報」と「その土地の特徴となる情報」とを合成したものであったはずだ。

 さしあたり「合成語の単位化」と呼びたい。たぶん「単位化」が起こるのは,夫妻がいくつも存在するとか,地名がいくつも存在するといった「合成された語を包含する,より大きなカテゴリがあるとき」だという自分の仮説を置いておく。

 

 ところでMr.&Mrs.という表現も,英語(母語(?))話者にとっては1つの単位として認識されてそうじゃないか?という指摘もあり得ると思う。自分の感覚では,"&"が"Mr.&Mrs."とを1個の単位として見せることを妨げ,"Mr,"と"Mrs."とを互いに独立したものに見せている気がするけれど。

 それから,日本語(母語(?))話者であっても「夫妻」を1個の単位として認識するよりは,構成要素の和として認識している人もいるのではないか?とも思う。

 

 おわり。

 

*1:母語(?

*2:母語(?