映画『ウォッチメン』

映画『ウォッチメン

 

 Zack Snyderによって監督された『ウォッチメン』(2009)を久しぶりに観た。原作はAlan Mooreによる"Watchmen"(1986-87,DC)。

 『ウォッチメン』の主な特徴を3つにまとめた。

 

  1. 複数の著名なコミックヒーローの要素を組合せ,パロディ的に設定されたらしきヒーロー
  2. ヒーローを具体的時代・具体的国に配置し,ヒーローの存在による社会的・政治的な影響をシミュレーション
  3. ヒーローの人格者的側面よりも,病的・心理的側面を強調した,皮肉っぽい作風(アンチヒーロー)(1,3との関連)

  原作の時点でコミック『ダークナイトリターンズ』との類似点がの存在が指摘されており,結末についてはNolan監督『ダークナイト』(2008)に似ている。

 

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メモ:①について

 「ウォッチメンWatchmen)」というのは劇中に登場するヒーローチームだ。メジャーなヒーローチームといえば

・Marvelコミックの「アベンジャーズ

・DCコミックの「ジャスティス・リーグ

が有名だ。『ウォッチメン』の原作コミックもジャスティス・リーグ同様にDCコミックから出版されているけれど,『ウォッッチメン』はクロスオーバー作品ではないという点で,アベンジャーズジャスティス・リーグとは異なる。

 例えばアベンジャーズジャスティス・リーグの構成員のほとんどが,自分の名前がタイトルに据えられた,自分を主役とする作品を持つ。バットマンには『バットマン』,スパイダーマンには『スパイダーマン』という作品がある。というのも,個々のヒーローをタイトルとする作品が先にあり,後から個々のヒーローの集合としてチームを結成させる作品ができたからだ。日本のヒーローで例えるならば,仮面ライダー達に近い。仮面ライダー3号や仮面ライダーアマゾンという個別のタイトルがあり,彼らは映画などでたまに集まって共闘する。

 アベンジャーズジャスティス・リーグとは異なり,ウォッチメンの構成員の誰かをタイトルに据える作品はない。というのも,ウォッチメンの構成員である個々のヒーローは『ウォッチメン』を描くために創造されたからだ。『ウォッチメン』はクロスオーバー作品ではない。この点において『ウォッチメン』は『X-MEN』とか『ファンタスティック・フォー』といった作品に近い。日本で言えばゴレンジャーなどのスーパー戦隊だ。

 しかしウォッチメンは,X-MENファンタスティック・フォーともまた異なる。というのもウォッチメンに登場するキャラクターの能力や戦闘力は,X-MENファンタスティック・フォーに比較して,均質ではないバラバラなものとして描写されているからだ。例えばX-MENという作品の中に登場するミュータント達の戦闘能力は,ある程度互角でないといけない。もう少し厳密に言えば,全員が互角な戦闘能力を持つ必要はないが,主役級のミュータント達は,ある程度互角な戦闘能力を持っていなければならない。というのも「瞬殺」で終わってしまうような明らかな能力差があると,読者にとってもつまらないし,長期連載ができない出版社側にとっては儲からないからだ(そういうわけで人間の中では戦闘力が高いとは言えメタヒューマンではないバットマンが「チート」のスーパーマンと戦うような企画を読み応えのあるものにするのは難しいわけである)。

 このような事情にもかかわらず『ウォッチメン』に登場するヒーロー達の間(ヒーローは普通ヴィランと戦うのだから,ヒーローとヴィラン間の戦闘能力の差が問題になるのだが,アベンジャーズにしろジャスティス・リーグにしろ,面白さのためヒーロー感の戦いを描くことがあるので,ヒーロー間の戦闘能力差は重要である(matter)。)には戦闘能力の明らかな差異がある。それはなぜなら,おそらく『ウォッチメン』は,ヒーロー漫画が普通描いているものを描くのではなく,ヒーロー漫画を描くものとして創造されたからだ。『ウォッチメン』というヒーロー漫画がやっていることはヒーロー漫画のやっていることではなく,ヒーロー漫画のパロディであるとか,ヒーロー漫画の風刺,皮肉,ヒーロー漫画というものの考察である。『ウォッチメン』は普通ヒーロー漫画が題材にするものを題材にするのではなく,ヒーロー漫画を題材にし,ヒーロー漫画に着想を得ている。

 だから『ウォッチメン』に登場する人物は,どこかで見たことのあるようなヒーロー要素を持っていて,無個性に思えることがある。『ウォッチメン』に登場するヒーローは,有名なヒーロー複数人の持つ要素を組み合わせたようなところがある。スーパーマンとアトムを組み合わせたような「Dr.マンハッタン」や,バットマン的な「ナイト・オウル2世」など。

 このように『ウォッチメン』に登場するヒーロー達は,有名なヒーロー達のパロディ的要素を持っている。

 

②,③について:時間があれば書く