「自然現象が数学で記述できるのはなぜか」? ー2

 

 まず初めにやりたいのは,「自然現象が数学で記述できるのはなぜか」というタイムラインで流れてきた通りの文言を少し厳密にして,問いに答えやすくすることだと思う。というのもこの問いは「自然現象が数学で記述できる」という前提に立っているが,この表現は少し強すぎると思う。

 自然現象にも色々ある。例えば「物理学が扱う自然現象が数学で記述できる」という表現にはまだ同意しやすいが,生物物理学があるにしても「生物学が扱う現象が数学で記述できる」という表現には賛同しがたい。例えば細胞の構造について観察したり,アイデアを出したりするという作業についてこれが数学をしていると言えるだろうか?動物の種を分類するといった作業を行うとき,我々は数学をしていると言えるだろうか? 「生命現象も物質的過程であり,物質的過程は究極的には素粒子間の相互作用に帰着できるであろうから,生物学も数式によって記述できるはずだ」という還元主義の発想には納得できるが,そのプランは現時点では実現していないし,行動目標ではなく達成目標であるから,「生物学が扱う自然現象が数学で記述できる」は現時点で事実ではない。したがって還元主義の立場については今は考えない。

 そもそも,例えば細胞の構造についてその粒子的に分析し,数式を用いて時間追跡するという作業を仮に行ったとして,それがどれほど生命現象の理解に寄与するかはよく分からない。

 というわけで「あらゆる自然現象が数式で記述できる」とか「あらゆる自然現象が数学的手法で研究できる」というわけではないという立場を採用することにしたい。

 

 「自然科学」の主要な大カテゴリのうち,化学については生物学よりも「数学で記述できる」部分が多いと思われるのだが,ちょっと微妙。

 比較的答えやすい,考えやすいのは「物理学の扱う現象が数学で記述できるのはなぜか」だと思うので,さしあたりはこの疑問について考えるのが良いのではないだろうか。